1. はじめに:なぜ今「教えないコンサル」が求められているのか

これまでのコンサルティングといえば、
クライアントの課題を分析し、正確な診断を下し、そこに対して明確な“解決策”を提示する――
いわゆる「提案型コンサルティング」が主流でした。
このスタイルは、情報や知識が限られていた時代には非常に効果的でした。
「知らないことを教えてもらう」「やり方を学ぶ」というニーズにしっかり応えることができたからです。
しかし現在、多くのクライアント――特に経営層やマネジメント層は、
すでに書籍・SNS・YouTube・オンライン講座・業界内のネットワークなどから、膨大な情報にアクセスできる環境にあります。
つまり、「情報が足りないからコンサルタントを呼ぶ」時代は終わりつつあるのです。
今、クライアントが求めているものは?
知識や正論は、クライアント自身も持っています。
それでも「動けない」「止まっている」のはなぜか?
そこには、
- 情報が多すぎて、何を選べばいいかわからない
- やるべきことは見えているが、動く決断ができない
-
社内の空気や過去の失敗がブレーキになっている
といった、“行動の障害”が存在しています。
つまり、クライアントが本当に必要としているのは、
「新しい答え」ではなく、「気づき」や「納得」なのです。
行動に火をつける支援が求められている
このような状況の中で注目されているのが、
ファシリテーション型コンサルティング(ファシリ型コンサル)という支援スタイルです。
このアプローチでは、コンサルタントが主導して答えを与えるのではなく、
問いや対話を通じて、クライアントの中にある“答えの種”を引き出すことに重きを置きます。
その結果、
- 自分の中から出てきた言葉だから納得できる
- 自分で気づいたから実行に移しやすい
- 気づいたことを他の人にも伝えやすい
といった、“自発的な行動”が自然と生まれてくるのです。
「教える」から「気づかせる」へ
これからのコンサルティングに求められるのは、
「このやり方が正解です」と導く存在ではなく、
「あなたにとっての正解は何か?」を一緒に探し、言語化を手伝う“伴走者”です。
クライアントの中に眠っている可能性や想いを掘り起こし、
行動につながる納得感と自信を届ける。
そんな“教えないコンサル”こそが、
今の時代にフィットした、次世代型の支援スタイルなのです。
2. ファシリ型コンサルとは?

ファシリ型コンサルとは、
クライアントに「教える」のではなく、「問いかけを通じて気づかせる」支援スタイルです。
このアプローチでは、コンサルタントは「答えを持った専門家」ではなく、
クライアントの思考や意思決定を支える“対話の伴走者”という立場に立ちます。
コンサルタントの役割は「導く」から「引き出す」へ
従来型のコンサルは、どちらかというと“正解を与える先生”のような存在でした。
- 課題を分析し
- 解決策を整理し
- 最短距離のプランを提示する
もちろん、それが必要な場面もあります。
ただし、相手がある程度の知識や経験を持っている場合、一方的に答えを提示されても“納得”や“行動”にはつながりにくいのです。
そのため、ファシリ型コンサルでは「導く」よりも、
クライアントが自分自身で気づくプロセスを最も大切にします。
ティーチング型とファシリ型の違い(比較表)
項目 | ティーチング型 | ファシリ型 |
---|---|---|
目的 | 正しい答えを提供する | クライアントの気づきを促す |
コンサルの役割 | 解決策を示す“専門家” | 対話を通じて引き出す“支援者” |
アプローチ | 分析 → 提案 | 問いかけ → 内省 → 言語化 |
ゴール | 正解へと導く | クライアント自身が答えにたどり着く |
つまり、“答えを持っている”前提の支援ではなく、“答えは相手の中にある”という前提に立つのがファシリ型です。
こんな場面で力を発揮する
ファシリ型コンサルは特に、
- 経営者や管理職など、自分なりの考えを持っている層
- チームの方向性を自分たちで決めたい現場
- 感情や価値観を伴う意思決定が必要な場面
などで力を発揮します。
たとえば、
「なぜ売上が落ちているのか?」というテーマに対して、
ファシリ型では、すぐに施策や分析を提示するのではなく、
「どこで違和感を感じていますか?」
「変化を感じたタイミングはいつでしたか?」
というような問いから、クライアント自身に考えさせていくアプローチをとります。
クライアント自身の言葉で答えを語れるようになる
このプロセスを丁寧に繰り返すことで、
クライアントは「なんとなく感じていた課題」を自分の言葉で語れるようになり、
納得度が高まり、行動意欲が自然と高まるようになります。
これこそが、ファシリ型の最大の特徴であり、強みです。
3. ファシリ型が特に効果的なクライアント層

ファシリ型コンサルティングが特に効果を発揮するのは、
経営者・管理職・専門職といった「意思決定と現場の橋渡しを担っている層」です。
彼らはすでに現場経験も豊富で、知識も十分にあります。
むしろ、「何をすべきかは頭ではわかっている。でも、なぜか動けない」という“もどかしさ”を感じていることが多いのです。
「答えはわかっている」が、動けない理由
この層のクライアントが抱える共通の悩みとして、こんな声があります:
- 社内の空気を壊したくなくて動けない
- どの施策から始めるべきか迷っている
- 過去に失敗した経験がブレーキになっている
- 本音では「これをやるべき」と思っていても、腹落ちしていない
つまり、情報や知識の不足ではなく、“納得”と“決断のきっかけ”が足りていないのです。
外からの“正解”ではなく、自分の中の“実感”が必要
経営者や管理職は、社内でも「決める側」「背負う側」として孤独を感じているケースも多いです。
そのため、外部のコンサルタントから「こうすべきです」と言われても、
- 押しつけられているように感じる
- 自分の考えを無視された気になる
-
理屈は正しくても、腹に落ちない
という反応になりやすい傾向があります。
ここで重要なのが、「自分で気づいたことは、自分で動きたくなる」という心理です。
ファシリ型では、この“内側の気づき”を対話を通じて引き出すため、
クライアント自身が「これは自分が決めたことだ」と納得して動けるようになります。
「自分の言葉で語れる」ことが実行力を高める
問題を誰かに説明するとき、
- 他人の言葉(借り物のフレームワーク)で話す人より
- 自分の言葉で整理して語れる人の方が、断然行動力があります。
ファシリ型は、問いかけを通して「言語化の手助け」をするスタイル。
その結果、
- 「本当の課題はこれだったんだ」
- 「これなら、まず一歩踏み出せそうだ」
- 「チームにも自分の言葉で伝えられる」
といった、自分ごととして行動につながる“内発的な動き”を生み出しやすくなるのです。
専門職や自営のクライアントにも有効
また、医師・弁護士・士業・デザイナー・個人経営者といった「専門家肌」の方々にも、ファシリ型は非常に相性が良いです。
なぜなら、こういった方々は「自分のスタイル」や「理念」を大切にしていることが多く、
一方的に「この方法でやってください」と言われることに抵抗感を持ちやすいからです。
むしろ、対話を通して自分の考えを引き出してくれる人に対しては、強い信頼を寄せます。
ファシリ型コンサルが効果的な相手は、「すでに答えに近い場所にいるけれど、あと一歩踏み出せない人たち」です。
その“一歩”を、自分自身の中から引き出し、納得して行動に変えてもらう――
このプロセスこそが、ファシリ型の真価が最も発揮される場面です。
4. 実践で使えるファシリテーションの問いかけ例

ファシリ型コンサルティングの最大の武器は「問い」です。
ただの質問ではなく、クライアント自身が“気づき”、思考を整理し、自らの言葉で語り出すきっかけとなる“問いかけ”。
この問いをうまく使えるかどうかで、対話の深さと成果が大きく変わります。
なぜ「問い」が重要なのか?
問いには以下のような効果があります:
- クライアント自身の思考を促し、考えを言語化させる
- 視点の転換を促し、新しい選択肢や可能性に気づかせる
- 本音や感情、価値観に気づく機会を与える
- 行動への“納得感”を引き出す
つまり、問いは「指示の代わり」として機能するのです。
ファシリテーションに使える“問い”のタイプ別例
以下に、実際のコンサル現場で使える問いかけをタイプ別に整理してご紹介します。
✅【現状を掘り下げる問い】
- 今、一番引っかかっていることは何ですか?
- どの瞬間に「止まってるな」と感じましたか?
- 進めようと思っても手が止まる場面は、どんなときですか?
👉 目的:漠然とした「違和感」や「モヤモヤ」を具体化させる
✅【理想を明確にする問い】
- 本当に実現したい姿って、どんな状態ですか?
- 理想の形が“自然に続いている日常”って、どんな感じでしょうか?
- 「こうなってたら最高だな」と思う瞬間って、ありますか?
👉 目的:抽象的な目標を“自分の言葉”で再定義させる
✅【選択肢を広げる問い】
- 他に選べるやり方はありそうですか?
- もし今のやり方を一旦やめてみるとしたら、代わりに何ができそうですか?
- あえて“逆の視点”で見ると、どう見えますか?
👉 目的:思考が一方向に固まっているときに、視点を変えるきっかけを与える
✅【未来志向の問い】
- それが解決したら、何が変わると思いますか?
- 1年後、「やってよかった」と思える未来はどんなものですか?
- 成功している状態のあなたは、どんなふうに考えていると思いますか?
👉 目的:行動の先にある希望や動機づけを引き出す
✅【行動を促す問い】
- 今日できる、最初の小さな一歩は何でしょう?
- もし今すぐ動くとしたら、まず誰に声をかけますか?
- 次の打ち手を決めるとしたら、どんな行動が“ちょうどよさそう”ですか?
👉 目的:「考える」から「動く」へ移行する支援
問いを使うときの注意点
どんなに良い問いでも、タイミングやトーンを間違えると「詰問」や「干渉」に感じられてしまいます。
ファシリ型では、次のポイントに気を配ることが大切です:
- “問いの前”に共感を置くこと(いきなり聞かない)
- 答えを急がせない(沈黙も大切な時間)
- 「正解」を求めない空気をつくる(安心感が気づきを促す)
- 問いは短く、やさしく、シンプルに
問いの質と同じくらい、「どう問いを届けるか」が大切です。
ファシリ型コンサルティングの問いかけは、相手の内側に眠る“答えのタネ”を水やりするようなものです。
押しつけず、焦らせず、
でも深く、静かに、相手の思考を促していく。
この問いの力を磨けば、
相手の変化はあなたが“言ったこと”ではなく、“気づかせてくれた時間”として記憶に残ります。
5. フレームワークではなく“会話設計”が重要な理由

コンサルティングといえば、よく「課題整理フレーム」「3C」「SWOT」「バリューチェーン」など、さまざまなフレームワークが使われます。
もちろんそれらには一定の効果がありますし、構造的に課題を捉えるにはとても便利です。
しかしファシリ型コンサルティングにおいては、フレームワークよりも“会話の流れ=会話設計”の方が重要になります。
なぜフレームワークでは届かないのか?
フレームワークはあくまで「ロジックで整理する道具」です。
ですが、クライアントが抱えている“本質的な課題”は、ロジックではなく感情や曖昧な思いから始まることが多いのです。
- モヤモヤしているけど、言葉にできない
- やらなきゃいけないのはわかってるけど、気が進まない
- 方向性は見えてるけど、自信が持てない
こうした感覚は、図解や分析では整理しきれません。
「問い」と「会話の流れ」を通じて、少しずつ形にしていく必要があるのです。
“問いの順番”が思考の順番になる
人は、「問われた順番」で思考が動きます。
つまり、どんなに良い問いを投げかけたとしても、その順番やタイミングを間違えると、相手の思考は進まず、逆に混乱してしまうことがあります。
そこで大切なのが、“問いのストーリー設計”です。
以下は、実際によく使われる会話の流れです:
■ 会話設計の基本5ステップ
① 現状の確認
「今、どんな状態ですか?」
クライアントの中にある“今”を言語化してもらう。
② 違和感の言語化
「どこかで“しっくりこない”と感じているのは、どんな部分ですか?」
うまく言葉にできていなかった“引っかかり”を可視化する。
③ 理想像の明確化
「本当は、どんな状態を目指したいですか?」
漠然とした希望を“自分の言葉”で明確にしてもらう。
④ 行動の障壁の明確化
「それができない原因って、どこにあると思いますか?」
「もし怖さがあるとしたら、何に対してでしょうか?」
理想と現実のギャップにある“障壁”を発見する。
⑤ 今できる一歩の確認
「それを踏まえて、今すぐやれそうなことは何ですか?」
行動につなげるための“最小の一歩”を自ら導き出してもらう。
なぜこの順番が大事なのか?
この流れは、実はクライアントの**「思考の自然な順番」**に寄り添っています。
- 「今」から話すことで安心感が生まれる
- 「違和感」を言語化することで思考が深まる
- 「理想」を語るとモチベーションが湧く
- 「障壁」に触れると現実的になる
- 「できること」に着地することで行動が始まる
このように、問いは“構造”ではなく“心の流れ”を設計するものなのです。
会話を「地図」にする感覚
クライアントが抱える課題は、整理されていない“感情と思考のジャングル”のようなもの。
そこで、コンサルタントはその中に“道筋(=会話の地図)”を引いてあげる役割を担います。
「こういう順番で話すと、見えてくるものがある」
「この問いのあとに、これを聞くと本音が出やすい」
そんな風に、問いの設計を通じて“思考の可視化”を支援することが、ファシリ型の真骨頂です。
ファシリ型コンサルでは、「答え」ではなく「問い」が主役。
そして、「問い」は順番が命です。
問いを点ではなく“線(ストーリー)としてつなぐ”ことで、
クライアントの思考は自然と深まり、自分自身の答えにたどり着けるようになります。
フレームより、会話の流れ。
それが、気づきと行動を引き出す本当の技術です。
6. クライアントが“自走”できる状態をどう育てるか

ファシリ型コンサルティングのゴールは、
「クライアントを依存させること」ではなく、「クライアントが自ら動けるようになること」です。
これは単に“放任”するという意味ではありません。
クライアント自身の中にある「気づき」と「決断」と「実行力」を引き出し、
最終的に外部支援がなくても前に進める力を育てることこそが、ファシリ型の真の価値です。
自走力を育てる「3つの循環」
クライアントが“自走”する状態とは、以下の3つの循環が自然に回っている状態です。
① 気づきが生まれる(内省と対話)
最初に必要なのは、現状や思考の整理を通じた“気づき”です。
この気づきは、他人から教えられるものではなく、
問いかけや対話、沈黙の時間を通じて自分の中からじわっと出てくるもの。
気づきによって、これまで曖昧だったことに輪郭ができ、
「なぜ自分は動けなかったのか」や「本当はどうしたかったのか」が見えてきます。
② 小さな行動を起こす(自分で決めて動く)
気づきがあっても、行動が伴わなければ意味がありません。
ここで重要なのは、他人に指示された行動ではなく、自分で決めた一歩を踏み出すこと。
ファシリ型では、「では何をやりましょうか?」という問いによって、
クライアントが自らアクションを選び、実行してみるプロセスを支援します。
ポイントは、“完璧な一歩”ではなく“やってみたいと思える小さな一歩”を一緒に探すこと。
この一歩が、次の動きの起点になります。
③ 成果や実感を得る(やってよかったと思える)
行動の先に何かしらの成果や手応えがあると、
クライアントは自然と「やってよかった」「もっと進めたい」と思うようになります。
この“実感”が、モチベーションとなり、次の気づきや行動につながります。
たとえ完璧な成果が出なかったとしても、
- 話すことで整理できた
- 一歩踏み出したことで状況が変わった
- チームの反応が見えた
こうした“小さな手応え”を拾い、クライアント自身が「進めている感覚」を持てるように支援することが大切です。
自走支援のためのコンサルの関わり方
クライアントの自走力を高めるために、コンサルタントが意識すべき関わり方は以下の通りです:
- 常に主導権は相手に持たせる(指示しない)
- 問いかけと傾聴で「気づきの余白」をつくる
- 行動への背中を優しく押すが、無理強いはしない
- 成功体験を言語化して「できた感」を育てる
そして何より、「クライアントを信じて待つ」姿勢が大切です。
焦って成果を出させようとするほど、クライアントは動けなくなってしまうこともあるからです。
「自走」は関係性を終わらせるのではなく、深化させる
自走できるようになったクライアントは、「もうコンサルいらないですよね」となるか?
実は、その逆です。
- 自分で考え、動けるようになったからこそ、次のステージの課題が見えてくる
- 「また一緒に考えてほしい」と、対話のパートナーとして継続依頼が増える
- より抽象度の高いテーマや、組織全体への展開を任されるようになる
このように、**依存ではなく“信頼ベースの継続関係”**に進化していくのが、ファシリ型の最大の強みです。
クライアントが自走できるようになるということは、
「クライアント自身が、自分の未来に責任を持てるようになる」ということです。
その状態を、一歩一歩一緒に育てていく。
それが、ファシリ型コンサルタントの最も価値ある仕事です。
7. よくある失敗とその回避法

ファシリ型コンサルティングは、問いを中心にした“寄り添う支援スタイル”であるがゆえに、その場の空気感や相手の心理状態に強く影響されるという特徴があります。
だからこそ、やり方を間違えると、
せっかくの問いが「重たい」「詰められている」「面倒だ」と感じられてしまうこともあります。
以下は、実践の現場で特によく起こりやすい3つの“落とし穴”と、その回避法です。
落とし穴①:問いが抽象的すぎて、相手が答えに困ってしまう
ファシリ型では「本質的な問いを投げる」ことが重要ですが、
あまりにも抽象度が高すぎると、相手は言葉にできず、“考えるのがしんどい”状態になってしまいます。
たとえば:
- 「あなたにとって本当の幸せとは?」
- 「この状況の核心って、何だと思いますか?」
- 「本当は、どうしたいんですか?」
こうした問いは鋭いようで、タイミングを間違えると「いきなり深すぎる」となり、相手の思考が止まってしまいます。
▶ 回避法:ステップ式の問いかけを使う
- まずは現状→違和感→理想と、段階を踏んだ問いにする
- たとえば「今、一番気になっているのはどんな点ですか?」と“入口を広く”
- 答えに詰まったら「そのままでもいいですよ」「うまく言えなくても大丈夫です」とフォローする
落とし穴②:対話のつもりが「詰問」や「心理的プレッシャー」になってしまう
問いかけが多くなりすぎたり、間を詰めすぎたりすると、
本来は「探る」ための対話が、**“詰められているような感覚”**に変わってしまいます。
特に、問いに対して「どうなんですか?」「で、結局?」と畳みかけるような言い方をしてしまうと、
クライアントは「評価されている」「追い込まれている」と感じてしまうことがあります。
▶ 回避法:問いの間に“余白”と“緩さ”を入れる
- 一つの問いを投げたら、答えを急かさず「間」を大切にする
- 「話しながら整理してもらって大丈夫です」と自然体を促す
- 話が重くなってきたら「一旦コーヒーでも飲みますか」とリセットを入れるのも効果的
落とし穴③:共感が足りず、クライアントが防御的になる
問いは鋭くても、関係性が温かくないと“刺さり”ではなく“傷つける”方向に働いてしまうことがあります。
特に、「よくあるパターンですよね」「それって◯◯のせいじゃないですか?」と先回りして決めつけてしまうと、
相手は「自分の話を聞いてくれていない」と感じ、心のシャッターを下ろしてしまいます。
▶ 回避法:「共感→問い→傾聴」の順番を守る
- まず「わかります」「その気持ち、自然ですよね」と共感を入れる
- そのあとに「じゃあ、少し掘ってもいいですか?」と許可をとって問いに入る
- 答えてくれたら「ありがとうございます、すごく深いお話ですね」とリアクションを返す
この流れを守ることで、相手の安心感と信頼感を守りながら、対話を深めることができます。
ファシリ型コンサルにおける問いかけは、
“鋭さ”と“やさしさ”のバランスが命です。
- 問いが甘すぎると、変化は生まれない
- 問いが強すぎると、防御されてしまう
- 一番大切なのは、「この人と話してると、気づけるし、動きたくなる」と思ってもらうこと
問いの技術は、単なる「質問力」ではありません。
“関係性を土台にした問いのあり方”こそが、ファシリ型コンサルタントの本質的な力です。
8. まとめ:答えはクライアントの中にある

ファシリ型コンサルティングは、何かを“教える”スタイルではありません。
むしろ、「クライアントの中にすでに存在しているものを引き出す」スタイルです。
そしてこの支援スタイルは、まるで“対話を通じた旅”のようなもの。
- すでに持っていたはずの答えに、自分自身で気づく
- 言葉にできなかった本音が、少しずつ輪郭を持ち始める
- 誰かに背中を押されるのではなく、自分の足で一歩を踏み出す
この一連のプロセスこそが、深い納得感と持続的な行動力を生み出します。
クライアントの人生や仕事の“主人公”は、あくまで本人
コンサルタントの役割は、“導く人”ではなく、“照らす人”です。
「こうすればいいですよ」と決めてしまうのではなく、
「あなたにとって、それはどう感じられますか?」と問いかけることで、
本人の中にある価値観・想い・選択肢を整理し、照らし出すのです。
この“内側から湧き上がる納得”が、どんな戦略よりも強く、行動を支えてくれます。
だからこそ、ファシリ型コンサルはこれからの時代に選ばれる
これからのクライアントは、
- 指示通りに動きたいのではなく、
- 自分の意志で進みたいと思っている。
それは経営者であれ、リーダーであれ、個人事業主であれ同じです。
「あなたの話を聞いてくれる人がいる」
「あなたの中の答えを信じてくれる人がいる」
そんな存在に出会えたとき、人は変わります。
答えを渡すのではなく、答えが生まれる場をつくる
ファシリ型コンサルの本質は、
「答えを持っている人になる」ことではありません。
「答えが見つかる空間をデザインできる人になる」ことです。
場の設計、問いの順番、沈黙の受け止め方、共感の置き方――
そのすべてが、クライアントの変化を静かに後押ししていくのです。
最後に
時代は、教える人より、気づかせる人を必要としている。
そして、気づきから行動へつなげる“思考の伴走者”こそが、
これからのコンサルタントに求められる最も大きな価値になります。
「クライアントの中にある“まだ言葉になっていない想い”を、形にする」
そのための問いと、信頼と、時間を届けていく――
それが、ファシリ型コンサルタントの歩む道です。
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