マーケティングに取り組んでいるものの、「広告やSNSの効果が分からない」「問い合わせは増えたが売上につながらない」「どの施策を続けるべきか判断できない」と悩んでいないでしょうか。
多くの会社が最終的な売上だけを見て、マーケティング施策の良し悪しを判断しています。しかし、売上はさまざまな活動が積み重なった結果として生まれる数字です。売上だけを確認していても、途中のどこに問題があるのかは分かりません。
特に、予算や人員が限られている小さな会社では、成果につながりにくい施策を長く続ける余裕はありません。限られた時間と費用を有効に使うためには、売上が生まれるまでの途中経過を数字で確認する必要があります。
そこで重要になるのが、マーケティングKPIの設計です。
この記事では、KPIの基本的な意味から、小さな会社が追うべき数字、設定するときの注意点まで分かりやすく解説します。
KPIとは何か

KPIとは、最終的な目標を達成するまでの進み具合を確認するための指標です。
例えば、最終的な目標が「月間売上を増やすこと」であれば、その前には次のような段階があります。
- 商品や会社を知ってもらう
- ホームページや店舗を訪れてもらう
- 商品やサービスに興味を持ってもらう
- 問い合わせや資料請求をしてもらう
- 商談や見積もりにつなげる
- 契約や購入をしてもらう
- 再び利用してもらう
それぞれの段階を数字で確認することで、売上が伸びない原因を見つけやすくなります。
ホームページへの訪問者が少ないのであれば、認知や集客に問題がある可能性があります。訪問者は多いのに問い合わせが少ないのであれば、ページの内容や申し込み方法を見直す必要があります。
問い合わせは多いのに契約につながらない場合は、営業方法や価格の伝え方に課題があるかもしれません。
KPIは、単に数字を管理するためのものではありません。次に何を改善すべきかを判断するための道しるべです。
売上だけを追ってはいけない理由
売上は、会社にとって非常に重要な数字です。しかし、マーケティングの改善を考えるとき、売上だけでは情報が不足しています。
例えば、今月の売上が前月より減少したとします。売上だけを見ても、次のどれが原因なのか判断できません。
- ホームページへの訪問者が減った
- 広告からの問い合わせが減った
- 問い合わせから商談への移行率が下がった
- 商談から契約への成約率が下がった
- 顧客一人当たりの購入金額が下がった
- リピーターが減った
原因が分からないまま、「広告を増やそう」「SNSの投稿回数を増やそう」と対策を決めても、成果につながらない可能性があります。
反対に、売上が増えている場合でも注意が必要です。一時的な大型契約によって売上が伸びているだけで、問い合わせ数や新規顧客数が減っていることもあります。
売上は結果を確認するための数字です。改善するためには、その売上を構成している途中の数字を確認することが重要です。
最終目標とKPIの違い

KPIを設定する前に、最終目標を明確にする必要があります。
最終目標には、売上、利益、新規契約数、継続顧客数などがあります。会社が最終的に達成したい成果を表す数字です。
一方、KPIは、その最終目標に到達するための途中経過を表します。
例えば、最終目標を「毎月10件の新規契約を獲得する」と設定した場合、次のような計算ができます。
商談から契約につながる割合が25%であれば、10件の契約を獲得するには40件の商談が必要です。
問い合わせから商談につながる割合が50%であれば、40件の商談を作るには80件の問い合わせが必要です。
ホームページ訪問者の2%が問い合わせをすると仮定すれば、80件の問い合わせを得るためには4,000人の訪問者が必要です。
この場合、追うべき主なKPIは次のようになります。
- ホームページ訪問者数
- 問い合わせ数
- 問い合わせ率
- 商談数
- 商談への移行率
- 成約率
このように最終目標から逆算すると、必要な行動や改善すべき数字が見えてきます。
小さな会社が追うべき基本的なKPI
業種や販売方法によって必要なKPIは異なりますが、小さな会社では次のような数字が基本になります。
1.見込み客との接触数
最初に確認したいのは、商品やサービスを知ってもらう機会がどれくらいあるかです。
具体的には、次のような数字が該当します。
- ホームページの訪問者数
- ブログ記事の閲覧数
- SNS投稿の表示回数
- メールやLINEの配信到達数
- 店舗への来店者数
- セミナーや相談会の参加者数
接触数が少なければ、どれほど良い商品を用意していても問い合わせや購入は増えません。
ただし、表示回数や閲覧数を増やすことだけが目的にならないように注意しましょう。重要なのは、見込み客になり得る人との接触が増えているかどうかです。
2.問い合わせ数
問い合わせ数は、見込み客が商品やサービスに具体的な関心を持ったことを示す数字です。
電話、メール、LINE、資料請求、見積もり依頼、無料相談など、どの行動を問い合わせとして扱うのかを決めておきましょう。
問い合わせ数が増えても、購入する可能性が低い人ばかりでは営業負担が大きくなります。件数だけでなく、どのような相談が多いのかも確認することが大切です。
3.問い合わせ率
問い合わせ率は、ホームページなどを訪れた人のうち、何%が問い合わせをしたかを示します。
計算方法は次のとおりです。
問い合わせ率=問い合わせ数÷訪問者数×100
例えば、ホームページへの訪問者が1,000人で、問い合わせが20件あった場合、問い合わせ率は2%です。
訪問者数が増えているのに問い合わせ数が変わらない場合は、ページの内容、商品の説明、申し込み方法などに改善の余地があります。
問い合わせ率を確認することで、集客の問題なのか、ページの問題なのかを分けて考えられます。
4.商談数と商談移行率
問い合わせのすべてが商談につながるわけではありません。
問い合わせから何件の商談が生まれたのかを確認します。さらに、問い合わせ数に対する商談数の割合も計算しましょう。
問い合わせは多いのに商談が少ない場合は、対象外の顧客を集めている可能性があります。また、問い合わせ後の連絡が遅い、説明が不十分、日程調整が複雑などの問題も考えられます。
5.成約率
成約率は、商談のうち何件が契約や購入につながったかを示す数字です。
成約率=契約数÷商談数×100
成約率が低い場合は、営業担当者の能力だけを原因にしてはいけません。
商品と顧客の需要が合っているか、価格に納得できる説明ができているか、競合との違いが伝わっているかなど、マーケティング全体を確認する必要があります。
6.顧客獲得単価
顧客獲得単価とは、新しい顧客を一人獲得するために、どのくらいの費用がかかったかを示す数字です。
顧客獲得単価=マーケティング費用÷新規顧客数
例えば、広告や制作などに20万円を使い、10人の新規顧客を獲得した場合、顧客獲得単価は2万円です。
顧客一人から得られる利益よりも獲得費用が高ければ、その方法を長く続けることは難しくなります。
広告費だけでなく、可能であれば制作費、外注費、運用に使った時間なども考慮しましょう。
7.顧客単価
顧客単価は、一人の顧客が一回の購入で使う平均金額です。
顧客単価=売上÷顧客数
新規顧客を増やすだけでなく、関連商品を提案する、複数の商品をまとめる、上位プランを用意するなどの方法で顧客単価を高められる場合があります。
ただし、無理な追加販売は顧客満足度を下げます。顧客の問題をより深く解決できる提案になっているかを基準に考えましょう。
8.リピート率
一度購入した顧客が、再び商品やサービスを利用した割合です。
新規顧客を獲得し続けるには多くの費用と時間がかかります。既存顧客との関係を育てることは、安定した売上を作るうえで重要です。
リピート率が低い場合は、商品への満足度、購入後の連絡、次回利用の案内、利用するタイミングなどを見直します。
KPIを増やしすぎない

数字を細かく管理しようとすると、多くのKPIを設定したくなります。
しかし、確認する数字が多すぎると、集計するだけで時間がかかり、どの数字を優先すべきか分からなくなります。
小さな会社では、最初からすべてを測定する必要はありません。売上までの流れを表す重要な数字を三つから五つ程度選びましょう。
例えば、ホームページから問い合わせを獲得し、営業担当者が契約につなげる会社であれば、次の五つから始められます。
- ホームページ訪問者数
- 問い合わせ数
- 商談数
- 契約数
- 顧客獲得単価
まずは毎月同じ条件で記録し、変化を確認できる状態を作ることが大切です。
数字は全体ではなく経路別に見る
問い合わせ数だけを合計していると、どの施策が成果を生んでいるのか分かりません。
可能であれば、問い合わせや契約を次のような経路別に分けて確認しましょう。
- 検索からのホームページ訪問
- Web広告
- SNS
- ブログ
- メールやLINE
- 紹介
- 店頭
- セミナーやイベント
問い合わせが少なくても成約率が高い経路もあれば、問い合わせは多いものの契約につながりにくい経路もあります。
例えば、SNSから50件の問い合わせがあり、契約が2件だったとします。一方、紹介から10件の問い合わせがあり、7件が契約になった場合、件数だけを見ればSNSのほうが優秀に見えますが、成約への貢献は紹介のほうが大きいことが分かります。
経路ごとに確認することで、予算や時間をどこに配分するべきか判断しやすくなります。
KPIには期限と基準を設定する
「問い合わせを増やす」という目標だけでは、達成できたかどうか判断できません。
KPIには、数字と期限を設定しましょう。
例えば、次のように具体化します。
- 3か月以内に月間問い合わせ数を20件から30件に増やす
- 半年以内に商談からの成約率を20%から30%に改善する
- 3か月以内に顧客獲得単価を3万円から2万5,000円に下げる
ただし、根拠のない高い数字を設定しても意味がありません。
過去の実績、現在の人員、使える予算、業界の特徴などを考慮し、少し努力すれば到達できる水準から始めましょう。
KPIを改善するときの考え方

KPIを記録するだけでは成果は変わりません。数字の変化から仮説を立て、改善につなげることが重要です。
例えば、ホームページへの訪問者は多いのに問い合わせ率が低い場合、次のような改善が考えられます。
- 商品やサービスの対象者を明確にする
- 顧客の悩みを冒頭で伝える
- 料金や利用の流れを分かりやすくする
- 実績や利用事例を掲載する
- 問い合わせボタンを見つけやすくする
- 入力項目を減らす
改善するときは、一度に多くの変更を行わないことも大切です。複数の部分を同時に変更すると、どの変更が効果を生んだのか分からなくなります。
一つの仮説を決めて試し、一定期間の結果を確認してから次の改善へ進みましょう。
数字だけで顧客を判断しない
KPIは非常に便利ですが、数字だけですべてを判断することはできません。
問い合わせ率が低くても、契約金額が大きく、長期間利用してくれる顧客を獲得できている場合があります。反対に、問い合わせ数が増えても、対応に時間がかかり利益が残らない場合もあります。
また、顧客がなぜ購入したのか、なぜ断ったのかといった理由は、数字だけでは分かりません。
問い合わせ時の質問、商談での反応、購入後の感想、解約理由なども記録しましょう。数字と顧客の声を組み合わせることで、より正確な改善ができます。
毎月一回の確認から始める
KPI管理に高価なシステムが必要とは限りません。
最初は表計算ソフトなどを使い、毎月一回、同じ項目を記録するだけでも十分です。
確認するときは、次の三点を話し合います。
- 前月から大きく変化した数字は何か
- 変化した理由として何が考えられるか
- 次の一か月で何を一つ改善するか
数字が悪かった担当者を責めるのではなく、改善する場所を見つけるために利用することが大切です。
KPIが評価や責任追及の道具になると、現場が正確な情報を報告しにくくなります。会社全体で問題を早く発見するための共通言語として活用しましょう。


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