コンサルタントとして活動を始めたものの、「なかなか相談が来ない」「ほかのコンサルタントとの違いを説明できない」「料金を伝えると断られてしまう」と悩んでいる人は少なくありません。
経験や知識を持っていても、それだけで顧客から選ばれるとは限りません。特に現在は、経営、営業、マーケティング、人材育成、業務改善、AI活用など、さまざまな分野でコンサルタントが活動しています。
選択肢が多いからこそ、顧客は「この人は自分の悩みを解決してくれるのか」を簡単に判断できません。
そこで重要になるのが、専門分野を絞り、自分が誰にどのような価値を提供できるのかを明確にするポジショニング戦略です。
この記事では、相談される前から価値が伝わるコンサルタントになるために、専門分野の決め方や発信方法について解説します。
コンサルタントに必要なポジショニングとは

ポジショニングとは、顧客の頭の中に「この悩みならこの人」と認識してもらうための立ち位置を決めることです。
単に「経営コンサルタントです」「営業の支援をしています」と伝えるだけでは、どのような顧客を対象に、何を解決してくれるのかが分かりません。
例えば、営業コンサルタントでも、対象とする顧客や解決する問題によって立ち位置は変わります。
- 中小企業の新規開拓を支援する
- 営業未経験者の育成を支援する
- 法人営業の商談成約率を改善する
- 紹介営業の仕組みづくりを支援する
- 営業活動へのAI導入を支援する
このように具体的にすると、見込み客は自分に関係があるかを判断しやすくなります。
ポジショニングは、自分を大きく見せるためのものではありません。自分の経験や強みを、必要としている人に分かりやすく届けるためのものです。
「何でもできます」が選ばれにくい理由
仕事を得る機会を減らしたくないという理由から、「経営に関することなら何でも相談してください」と伝えてしまうことがあります。
対応できる範囲が広いことは強みですが、最初から何でもできると伝えると、かえって専門性が分かりにくくなる場合があります。
顧客が探しているのは、幅広い知識を持つ人ではなく、今抱えている問題を解決してくれる人です。
売上が伸びずに悩んでいる経営者がいた場合、「経営全般を支援します」という人よりも、「地域密着型店舗の新規顧客獲得を支援します」という人のほうが、自分の悩みを理解してくれそうだと感じるでしょう。
専門分野を絞ることは、対応できる仕事をすべて断るという意味ではありません。最初に覚えてもらう入口を一つに決めるということです。
入口を分かりやすくすることで、相談される可能性が高まります。信頼関係ができれば、最初の相談とは異なる問題について依頼されることもあります。
専門分野を絞る三つの視点

専門分野を決めるときは、「自分が好きなこと」だけで考えるのではなく、経験、市場、成果という三つの視点を組み合わせます。
1.自分の経験を整理する
最初に、これまでの仕事や活動を振り返ります。
肩書きや資格だけではなく、実際に経験した業務、工夫したこと、改善したこと、失敗から学んだことを書き出してみましょう。
例えば、次のような経験が専門性の材料になります。
- 新規顧客を開拓した経験
- 売上が低迷している店舗を立て直した経験
- 社員教育の仕組みを作った経験
- 業務の無駄を減らした経験
- SNSやブログから集客した経験
- AIを導入して作業時間を短縮した経験
本人にとっては当たり前の経験でも、同じ問題に悩んでいる人にとっては価値のある情報です。
大きな成功だけを探す必要はありません。どのような問題に向き合い、どのように改善したのかを具体的に整理することが重要です。
2.顧客の悩みを確認する
自分に経験があっても、それを必要とする人がいなければ仕事にはつながりません。
過去に顧客から相談されたこと、取引先が困っていたこと、同業者から質問されたことを振り返りましょう。
顧客が実際に使う言葉を集めることも大切です。
例えば、「マーケティング戦略に悩んでいる」という表現よりも、実際の顧客は次のような言葉を使うかもしれません。
- 広告を出しても問い合わせが増えない
- SNSを始めたが何を投稿すればよいか分からない
- 新規顧客は来るがリピートにつながらない
- ホームページはあるが集客できていない
- 営業担当者によって成績の差が大きい
専門分野を決めるときは、難しい専門用語よりも、顧客が日常的に感じている悩みを基準に考えると伝わりやすくなります。
3.提供できる成果を明確にする
顧客はコンサルティングそのものを買いたいわけではありません。相談した結果として得られる変化を求めています。
そのため、「分析します」「アドバイスします」だけでなく、支援によってどのような状態を目指すのかを示す必要があります。
例えば、次のように表現できます。
- 営業活動を整理し、安定して商談を作れる状態を目指す
- 問い合わせから契約までの流れを改善する
- 社員が自分で判断して行動できる仕組みを作る
- 集客方法を整理し、継続的に情報発信できる状態を作る
- AIを活用し、定型業務にかかる時間を削減する
必ず成果を保証するという意味ではありません。顧客と一緒に目指す変化を分かりやすく示すことが重要です。
「誰に・何を・どのように」で専門性を表す
専門分野を整理するには、「誰に」「何を」「どのように」という三つの要素を一文にまとめます。
基本となる形は次のとおりです。
「私は、〇〇に悩んでいる人や企業に対して、〇〇という方法を使い、〇〇を実現する支援をしています」
例えば、次のように表現できます。
「私は、新規顧客を獲得できずに悩んでいる地域密着型の事業者に対して、紹介と情報発信を組み合わせた集客の仕組みづくりを支援しています」
「私は、営業担当者の育成に悩む中小企業に対して、商談の進め方を標準化し、組織として営業力を高める支援をしています」
「私は、AIを導入したいが使い方が分からない小規模事業者に対して、日常業務に合わせた活用方法を提案し、作業時間の削減を支援しています」
この一文を読んだだけで、自分に相談すべきかを判断できる状態が理想です。
専門分野は掛け合わせて作る

すでに競合が多い分野では、一つの専門性だけで差別化することが難しい場合があります。
そこで、自分の経験を二つまたは三つ掛け合わせて考えます。
例えば、「営業」だけでは対象範囲が広すぎますが、「建設業界」「営業」「人材育成」を組み合わせれば、建設会社の若手営業担当者を育成する専門家という立ち位置を作れます。
「飲食店」「SNS」「リピーター獲得」を組み合わせれば、飲食店の再来店を促す情報発信の専門家として活動できます。
掛け合わせの例としては、次のようなものがあります。
- 業界と専門分野
- 顧客の規模と解決する問題
- 過去の経験と新しい技術
- 対象者と提供方法
- 地域とサービス内容
ただし、要素を増やしすぎると、対象となる顧客が極端に少なくなります。最初は二つ程度を掛け合わせ、反応を確認しながら調整するとよいでしょう。
実績が少ないときの専門性の伝え方
コンサルタントとして独立したばかりで、紹介できる実績が少ない場合もあります。
そのようなときに、実績を大きく見せる必要はありません。これまでの職務経験や、自分で実践してきた内容を具体的に伝えましょう。
例えば、会社員時代に営業成績を改善した経験、店舗運営で集客方法を変えた経験、社内の業務手順を整理した経験なども立派な材料です。
また、自分の考え方や支援の進め方を発信することでも専門性を示せます。
- 問題をどのような順番で整理するのか
- 最初に何を確認するのか
- どのような失敗が起こりやすいのか
- 改善するために何から始めるのか
- 成果をどのように測定するのか
結果だけでなく、問題を解決するまでの考え方を伝えることで、顧客は安心して相談できるようになります。
情報発信の内容を統一する
ポジショニングを決めても、発信内容が毎回異なっていると専門性が伝わりません。
営業について発信した翌日に投資の話をし、その次に健康や旅行について発信していると、何の専門家なのかが分かりにくくなります。
個人的な話題を発信してはいけないわけではありませんが、仕事につなげたい場合は中心となるテーマを決める必要があります。
発信内容は、次の三つを軸にすると整理しやすくなります。
顧客の悩みに答える内容
顧客が困っていることや、よく質問されることを取り上げます。検索やSNSで見つけてもらう入口になります。
問題を解決する方法
実際に何をすればよいのかを、手順や具体例とともに説明します。コンサルタントの知識や考え方が伝わります。
実践事例や経験
成功事例だけでなく、失敗したことや改善した過程も紹介します。経験に基づいた発信は、信頼につながります。
同じ専門分野について継続的に発信すると、読者の中に「このテーマに詳しい人」という印象が作られていきます。
ポジショニングは一度決めたら終わりではない

専門分野を絞ることに対して、「あとから変更できなくなるのではないか」と不安を感じる人もいるでしょう。
しかし、ポジショニングは固定するものではありません。顧客の反応や自分の経験に応じて見直していくものです。
最初に決めた専門分野で発信し、相談内容や反応を確認します。
想定していなかった顧客から相談が増えた場合や、特定の問題について高く評価された場合は、そこに需要がある可能性があります。
反対に、発信を続けても相談につながらない場合は、対象者が曖昧ではないか、悩みの表現が顧客の言葉になっているか、提供する成果が伝わっているかを見直します。
実際の反応を見ながら調整することで、自分だけの立ち位置が明確になっていきます。

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