- 1. はじめに:なぜ今UGCが注目されているのか
- 2. UGC(ユーザー生成コンテンツ)とは何か
- 3. なぜUGCが効果的なのか:信頼と共感のメカニズム
- 4. 成功企業に学ぶUGC活用事例
- 5. 実践ステップ:UGCをビジネスに活かす方法
- 6. 効果測定:UGCの成果を“数字で見える化”する
- 7. 今後の展望:UGCが創る“共創マーケティング”の未来
- 8. まとめ:UGCは「企業の広告」ではなく「顧客の証言」
1. はじめに:なぜ今UGCが注目されているのか

ここ数年、マーケティングの世界では「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」という言葉が急速に注目を集めている。
その背景には、消費者の情報の受け取り方の変化と、SNSによる購買行動の進化がある。
かつて、広告は「企業が発信し、消費者が受け取る」という一方向の構図で成り立っていた。
しかし、今の時代は違う。消費者自身が情報を発信し、他の消費者に影響を与える「共感の連鎖」が起きている。
この構造の変化が、UGCをマーケティングの中心に押し上げている。
■ 消費者が「広告を信じない時代」になった
情報があふれる現代では、消費者は企業の広告や宣伝を鵜呑みにしなくなった。
むしろ「広告=誇張された情報」という認識すら広がっている。
特に若年層を中心に、テレビCMやネット広告よりも、SNS上でのリアルな口コミや使用感レビューを重視する傾向が強まっている。
たとえば、Z世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)の約70%が「商品購入前にSNSの投稿を参考にする」と答えているという調査もある。
これは、企業発信よりも「同じ立場の人=リアルな利用者」の声を信頼するようになったことを意味している。
この変化によって、企業がどれだけ広告費を投じても、消費者の信頼を得ることが難しくなってきた。
結果として、UGCのような“第三者によるリアルな声”がブランド信頼を支える重要な要素となったのだ。
■ SNSが生んだ「共感経済」の時代
InstagramやTikTok、X(旧Twitter)といったSNSの台頭により、情報の流れは劇的に変わった。
今では誰もがスマートフォン一つで情報を発信でき、消費者同士が繋がる「共感のネットワーク」が生まれている。
この共感のネットワークでは、企業よりも「個人の発信」が力を持つ。
フォロワー数が多いインフルエンサーだけでなく、身近な友人や同世代の投稿にも強い影響力がある。
そのため、消費者は“企業ではなく人”を見て判断する傾向が強まっている。
つまり、企業がどんなに優れた広告を打ち出しても、
消費者がSNSで共感する投稿がなければ、商品やサービスは広がらない。
UGCは、この「共感経済」の中でブランドを広める最大の推進力となっている。
■ ブランド発信から「共創型マーケティング」へ
従来のマーケティングは、企業がストーリーを作り、消費者がそれを受け取る形だった。
しかし今では、消費者自身がそのストーリーを作り、発信する時代に変わっている。
この変化は、単なる発信者の増加ではなく、「ブランドが顧客と一緒に作られる」構造への転換を意味する。
UGCを活用することで、企業は顧客との関係をより立体的に築くことができる。
ユーザーの投稿を通じてブランドの世界観を拡張し、顧客の声がブランドストーリーの一部になる。
つまりUGCは、企業と消費者の間に“共創の接点”を生み出すマーケティング手法でもあるのだ。
■ UGCが生み出す“信頼と共感”の新しい経済圏
今、マーケティングの現場では「企業が何を言うか」ではなく、「消費者がどう語るか」が価値を決める時代に突入している。
UGCは、企業が発信するメッセージを超え、消費者自身がブランドを育てる文化を生み出している。
このように、UGCは単なる口コミではなく、“共感を軸にした信頼経済の基盤”であり、
現代のマーケティング戦略において不可欠な存在となっている。

2. UGC(ユーザー生成コンテンツ)とは何か

UGCとは「User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)」の略称であり、
企業やメディアではなく、“一般のユーザー自身”が自主的に作り出したコンテンツを指す。
近年、SNS・動画プラットフォーム・ECサイトの普及によって、
ユーザーが日常的にコンテンツを生み出す環境が整い、UGCは企業のマーケティングにおいて重要な要素となっている。
■ UGCの具体的な種類
UGCと一口に言っても、その形は多様であり、あらゆるプラットフォームで生まれている。
主な種類は以下の通り。
-
レビュー・口コミ(Text型)
ECサイトやGoogleマップ、食べログなどで投稿される評価コメント。
他のユーザーの購買判断に直接的な影響を与える。
例:「星4.5のレビュー」「使ってみた感想」など。 -
写真投稿(Image型)
Instagramなどで、ユーザーが実際に商品を使った写真を投稿。
企業の広告写真よりも“リアルな使用感”を伝える効果がある。
例:「#今日のコーデ」「#購入品紹介」など。 -
動画投稿(Video型)
TikTokやYouTubeなどでの商品レビュー・体験動画。
“使い方”や“ビフォーアフター”など、体験の臨場感をダイレクトに伝えられる。 -
ブログ・記事・ストーリー(Long-form型)
個人ブログやnoteなどでの体験記や比較レビュー。
専門的・詳細な視点から商品やサービスを分析するUGCも多く、検索エンジン経由で長期間読まれる。 -
コミュニティ投稿・SNSコメント(Engagement型)
X(旧Twitter)やLINEオープンチャットなどでの意見交換。
ブランドやサービスに対する率直な意見がリアルタイムで拡散される。
このように、UGCは単なる“口コミ”ではなく、ユーザーが自ら参加し、共感を生み出す一種のコミュニケーション文化といえる。
■ 企業発信との根本的な違い
UGCが持つ最大の特徴は、企業発信とは異なる「第三者の信頼性」である。
企業はブランドを良く見せようとする意図がある一方で、UGCは消費者目線での“リアルな評価”を伝える。
この違いが、現代のマーケティングにおいて大きな意味を持つ。
比較項目 | 企業発信(広告・PR) | UGC(ユーザー生成コンテンツ) |
---|---|---|
発信者 | 企業・ブランド側 | 一般ユーザー |
発信目的 | 商品・サービスの宣伝 | 体験共有・意見発信 |
伝わり方 | 一方向的・計画的 | 双方向的・自然発生的 |
信頼度 | やや低い(宣伝意図が明確) | 高い(第三者視点) |
拡散性 | 広告予算に依存 | 共感・シェアにより拡大 |
コントロール性 | 高い(企業主導) | 低い(ユーザー主導) |
このようにUGCは、企業が直接コントロールできない“予測不能な要素”を持ちながらも、
消費者のリアルな共感を呼び起こすことで、ブランドの信頼構築に大きな力を発揮する。
■ UGCが“広告以上の効果”を持つ理由
UGCは広告ではない。だからこそ、広告以上に消費者の心に届く。
その理由は3つある。
-
リアリティの高さ
ユーザー自身が撮影・投稿するため、演出が少なく“本物”に感じられる。
実際の利用シーンや率直な感想は、消費者に「自分ごと」として共感されやすい。 -
信頼の連鎖
UGCは“第三者の声”として受け止められるため、情報の信頼性が高い。
企業発信よりも「他の消費者が言っている」という社会的証明(ソーシャルプルーフ)が働く。 -
拡散力の高さ
UGCは共感を起点に自然にシェアされる。
特にSNSでは、「他人に勧めたい」という感情が拡散のエネルギーになる。
これにより、UGCは企業が予算をかけた広告よりも、少ないコストで大きな影響を生むマーケティング資産となる。
■ UGCがブランドにもたらす3つの価値
-
ブランドの“透明性”を高める
リアルな投稿が多いほど、ブランドが隠し事のない誠実な姿勢を印象づける。 -
顧客との関係性を強化する
UGCを公式で紹介することで、ユーザーとの信頼関係が深まり、ファン化を促進できる。 -
市場理解と商品改善に役立つ
UGCから得られるリアルな声は、顧客ニーズの把握や商品改善のヒントとなる。
■ UGCは「顧客が語るブランドの物語」
UGCとは、企業が作る“広告”ではなく、顧客が語る“ブランドストーリー”そのものである。
企業が一方的に伝えるメッセージではなく、顧客の体験や感情がブランドの価値を語る。
だからこそUGCは、単なる宣伝手段ではなく、顧客とブランドが共に価値を作り上げるマーケティング基盤と言えるだろう。
3. なぜUGCが効果的なのか:信頼と共感のメカニズム

UGC(ユーザー生成コンテンツ)がこれほどまでに注目される理由は、
単に「口コミだから信頼される」ではない。
UGCには、消費者心理に直接働きかける“信頼”と“共感”の仕組みが組み込まれている。
広告のように一方的に伝えるのではなく、「人が人に伝える」という構造こそが、UGCの本質的な強みである。
■ 1. 「信頼」は“第三者の声”から生まれる
マーケティング心理学では、人は企業の言葉よりも「他人の意見」を信じる傾向があることが知られている。
この現象は「ソーシャルプルーフ(社会的証明)」と呼ばれ、
“他の人が良いと言っているから、きっと自分にとっても良いものだ”という無意識の安心感を生む。
例えば、誰かがSNSで「このカフェ、居心地が良かった」と投稿していたら、
私たちはその投稿者が知らない人であっても、その意見をある程度信じてしまう。
UGCはまさに、この「第三者の信頼」を可視化する仕組みであり、
それが積み重なることで、ブランド全体の信頼資産(トラスト・キャピタル)を形成する。
つまり、UGCは「企業が信頼を語る」のではなく、
「顧客が信頼を代弁する」構造を作り出しているのだ。
■ 2. “リアルな体験”が広告では伝えられない説得力を持つ
UGCは、広告では再現できない「生活者のリアル」を伝える。
それは、光の当たる角度や、言葉のトーン、表情の自然さといった“無意識のリアリティ”によって表現される。
たとえば、企業が撮影した商品写真は完璧に整っているが、
ユーザーが投稿した少し雑然とした写真のほうが“本当に使われている感”を伝える。
この「リアルさ」は、受け手の防御反応(“売られている感”)を和らげ、
心理的な距離を縮める効果を生む。
消費者がUGCを信じるのは、そこに“演出ではない生活感”があるからだ。
つまり、UGCの力は「信頼の演出」ではなく「信頼の自然発生」にある。
■ 3. 「共感」が購買行動を動かす最大の要因
UGCは「同じ目線の人が話している」ことにより、強い共感を生む。
これは単なる情報伝達ではなく、「感情の共有」による説得効果である。
「自分と似た人が使っている」「自分と同じ悩みを解決した」
――この感情が購買意欲を高める“トリガー”になる。
人は合理的な理由だけでモノを買うわけではない。
「自分もそうなりたい」「同じ体験をしたい」という感情的要素が、意思決定を大きく左右する。
UGCはその感情を最も自然な形で引き出すメディアであり、
共感を生む“ストーリーテリングの場”になっている。
■ 4. インフルエンサー投稿との違い:「リアルさの深度」
UGCとインフルエンサー投稿はしばしば混同されるが、その本質は異なる。
比較項目 | UGC(一般ユーザー投稿) | インフルエンサー投稿 |
---|---|---|
主体 | 一般消費者 | 影響力のある発信者 |
発信意図 | 純粋な体験共有 | プロモーションを含む場合が多い |
受け手の印象 | 等身大・リアル・自分ごと化しやすい | 憧れ・トレンド感はあるが距離がある |
信頼形成の要素 | 「同じ立場の声」 | 「憧れの存在の声」 |
インフルエンサー投稿は「広げる力」がある一方、
UGCは「根付かせる力」がある。
つまり、短期的な拡散を狙うならインフルエンサー、
長期的なブランド信頼を築くならUGCが適している。
■ 5. 「共感の連鎖」がブランドを育てる
UGCは単発の投稿で終わらない。
他の消費者がその投稿を見て「自分も投稿してみよう」「このブランドいいかも」と感じることで、
共感の連鎖(エモーショナル・チェーン)が起きる。
この連鎖が広がることで、企業が何もしなくても自然とUGCが増えていく“好循環”が生まれる。
結果として、企業は「共感を媒介にして育つブランド文化」を形成できる。
UGCを中心としたブランドは、広告によって動かされるのではなく、
顧客の声によって“自走する”仕組みを持っているのだ。
■ 6. 信頼と共感が融合する「UGCマーケティングの本質」
UGCが効果的である最大の理由は、“信頼”と“共感”が同時に作用する唯一のメディアであるという点にある。
- 信頼は「事実」から生まれ、
- 共感は「感情」から生まれる。
この2つを同時に動かすのは、UGC以外に存在しない。
広告は事実を伝えられても感情を動かしにくく、
インフルエンサーは感情を動かせても信頼を得にくい。
UGCはその中間に立ち、
「事実の共有 × 感情の共感」を自然に融合させる。
これこそが、UGCが“売らずに売れる”メディアと呼ばれる理由である。
■ UGCは「信頼を生むストーリー」である
UGCの力は、単に拡散力や口コミの数ではない。
人々の心の中に「自分と同じ人が語るリアルな物語」を残すことにある。
企業が作る広告が“ブランドの声”だとすれば、
UGCは“ブランドを信じる人々の声”である。
その声が積み重なることで、企業の言葉よりも強く、
ブランドそのものの信頼と共感が形作られていく。
4. 成功企業に学ぶUGC活用事例

UGCを効果的に活用している企業の多くは、単に「ユーザー投稿を紹介する」のではなく、
顧客の声をブランドの“共創パートナー”として取り入れている点に共通している。
この「共創型マーケティング」の思想が、UGCを一過性のキャンペーンではなく、
ブランド資産を育てる長期戦略として機能させている。
以下では、SNS・動画・ECの3つの軸で代表的な成功事例を解説する。
■ 事例①:InstagramでのUGCキャンペーン
共感を軸にした“参加型ブランディング”の成功例
ある化粧品ブランドでは、Instagram上で「#私のスキンケアルーティン」というハッシュタグキャンペーンを実施した。
ユーザーが自分のスキンケア方法を写真付きで紹介することで、製品の使い心地や効果を自然に発信してもらう仕組みだ。
企業側は「投稿をお願いする」ではなく、
“共感できるテーマを提示し、ユーザーの自己表現を促す”ことに焦点を当てた。
結果、数千件を超える投稿が自然発生的に集まり、
その中から優秀な投稿をブランド公式アカウントで紹介。
投稿者本人のフォロワーや友人にも拡散され、UGCが“ブランドを通じた共感の輪”として広がった。
この施策で得られた効果は2つ。
1つ目は、広告では得られない「リアルな使用シーンの多様性」。
2つ目は、「自分の投稿がブランドに紹介される」という喜びがユーザーのブランドロイヤルティを高めた点である。
この事例が示すのは、UGCキャンペーンを成功させる鍵は「企業目線ではなく、ユーザー目線のテーマ設計」にあるということだ。
■ 事例②:TikTokでのUGC拡散
“自然なバズ”を生み出すチャレンジ企画の設計
ある食品メーカーは、TikTok上で「#〇〇レシピチャレンジ」というUGC企画を実施した。
内容は、自社製品を使ったオリジナル料理動画を投稿してもらうというもの。
重要だったのは、投稿の目的を「商品紹介」ではなく、
“楽しみながら参加できるコンテンツ体験”として設計した点である。
ユーザーは、「上手にできた料理」ではなく、「自分らしい工夫」を競う形式で投稿しやすく、
結果的にハードルの低い参加型UGCが急速に拡散した。
企業は投稿をリポストし、公式アカウントでも「ユーザーの創意工夫」を称賛。
この「承認の連鎖」が生まれたことで、短期間で数百万人規模の自然拡散を実現した。
加えて、従来の動画広告に比べて制作コストが圧倒的に低く、
広告的な“押しつけ感”がない分、視聴者のエンゲージメント率が高かった。
この事例が教えてくれるのは、UGCの本質は“広告的な訴求”ではなく、
「参加する体験」そのものを設計することがマーケティングになるという点だ。
■ 事例③:ECサイトでのレビュー活用
“購買前の心理的ハードル”を下げるUGCの力
大手EC企業では、UGCを「レビュー」という形で体系的に活用している。
購入者が投稿した写真付きレビューをサイト内で目立つ位置に配置し、
リアルな声を購買の判断材料として活かしている。
レビュー投稿は単なる評価情報ではなく、「使ってみた人のリアルな証言」として機能している。
特に、写真付き・動画付きレビューは「自分も同じように使えそう」と具体的なイメージを与え、
購入に至るまでの心理的ハードルを大きく下げている。
また、レビューの中で顧客が語る「良かった点」「改善点」は、
マーケティングデータとして商品改良にも役立っている。
つまりUGCは、単なる販促ではなく、“市場リサーチツール”としての価値も持っているのだ。
結果として、UGCレビューを活用した商品のコンバージョン率は、非掲載商品と比較して約1.5倍〜2倍に向上。
EC業界全体でも、「ユーザーの声をいかに見せるか」が競争力を左右する時代になっている。
■ 事例④:アパレル業界におけるUGCの共創活用
「顧客がモデルになる」ブランド構築の手法
アパレルブランドでは、UGCを“ブランドビジュアルの一部”として取り入れる動きが進んでいる。
あるD2C(Direct to Consumer)ブランドでは、顧客が投稿した着用写真を公式オンラインストアや広告素材として再利用。
「プロモデルではなく、実際のユーザーが着ている」ことで、リアルなサイズ感・着こなしイメージを訴求している。
さらに、その投稿者に対して「アンバサダー認定」を行い、
限定イベントへの招待や割引特典を提供することで、“ブランドの共創コミュニティ”を形成した。
このようにUGCは、単なる投稿収集ではなく、
顧客をブランドの“共演者”に変える仕組みとして活用できる。
結果的に、企業が作る広告よりもはるかに高いエンゲージメントを獲得している。
■ 事例⑤:観光・自治体のUGCマーケティング
“地元の魅力”を地元の人が発信する地域ブランディング
観光業界や自治体でもUGCの活用が加速している。
特定の観光地に訪れた旅行者が撮影した写真を公式SNSでリポストし、
「地元のリアルな魅力」として発信するケースが増えている。
たとえば、ある地方自治体では「#〇〇のある暮らし」というハッシュタグを活用し、
地元住民や観光客の写真を投稿型キャンペーンとして展開。
その結果、地元発信のリアルな風景が多くの共感を呼び、観光誘致だけでなく、移住促進にもつながった。
このようにUGCは、“地域の広告ではなく、地域の物語”として機能し、
公的なPRよりも自然で信頼されるコミュニケーション手段になっている。
■ 成功事例から見えるUGC活用の共通点
成功企業のUGC戦略には、以下の3つの共通点がある。
-
「投稿してもらう」ではなく「参加したくなる仕掛け」を作る
キャンペーン設計の中心は企業ではなくユーザー。
楽しさ・共感・承認欲求を刺激するテーマ設定が重要。 -
UGCを“使う”のではなく“共に作る”意識を持つ
UGCは消費者の声を借りるものではなく、ブランドストーリーを共に紡ぐ手段。
投稿者への感謝や紹介が次のUGCを生み出す。 -
短期的な話題づくりではなく、長期的なファン形成を目指す
UGCは即効性よりも「信頼の蓄積」に価値がある。
継続的にUGCを拾い上げる運用体制がブランドの成長を支える。
■ UGCは「消費者を巻き込むブランド成長エンジン」
UGCの成功事例に共通するのは、企業が“発信者”から“共創者”へと立場を変えていることだ。
ユーザーが自然にブランドを語り、共有し、拡散してくれる。
その連鎖が、広告では得られない「信頼」「熱量」「共感」を生み出している。
UGCとは、単なるマーケティング手法ではなく、
ブランドと顧客が共に歩む成長の仕組みそのものなのである。
5. 実践ステップ:UGCをビジネスに活かす方法

UGCは「投稿されるのを待つ」ものではない。
効果的に活用するためには、意図的に“投稿が生まれる環境”を設計し、継続的に循環させる仕組みが必要である。
以下の5ステップを実践することで、UGCを単発のキャンペーンではなく、
企業成長のエンジンとして活かすことができる。
■ ステップ①:投稿を自然に促す仕掛けを作る
—「投稿したくなる動機」をデザインする
UGCの発生源は“顧客の体験”にある。
つまり、UGCを増やす第一歩は「顧客が体験を共有したくなるきっかけをつくること」だ。
たとえば以下のような工夫が効果的である。
- ハッシュタグキャンペーンの設計
単に「#〇〇キャンペーン」ではなく、参加者が“自分の体験を語りたくなる”テーマ設定にする。
例:「#わたしの朝ルーティン」「#週末のご褒美スイーツ」など。 - 投稿することで得られる“価値”を明確にする
特典(プレゼント、割引、限定体験)を提示するのも有効だが、
「ブランド公式に紹介される」「自分の投稿が注目される」という“承認欲求”を満たす設計が最も強い。 - ブランド体験そのものをUGC化する
パッケージや商品自体に「写真を撮りたくなる要素」を組み込む。
たとえば、スターバックスの季節限定カップや、無印良品のミニマルデザインなどは“撮りたくなる”体験を意図的に設計している。
UGCは「投稿してください」とお願いするよりも、
“投稿せずにはいられない”体験をつくることが本質である。
■ ステップ②:ユーザー投稿を収集・選定する仕組み
—「量」と「質」を両立させるUGC収集体制を構築
UGCを戦略的に活用するには、どの投稿を拾い、どの投稿を活かすかを明確にすることが重要だ。
そのためには以下のような運用ルールを整える。
-
自動収集ツールの導入
SNS上で指定ハッシュタグを自動収集するツール(例:Togtag、Social Insight、Sprinklrなど)を活用することで、投稿を効率的にモニタリングできる。 -
専用フォーム・アンケートの設置
UGCをSNSに限定せず、購入後メールや顧客アンケートからも投稿を促す。
レビュー、体験談、写真など、UGCの幅を広げることができる。 -
ブランド基準に沿った選定ガイドラインの策定
すべてのUGCを再利用できるわけではない。
「ブランドトーンに合っているか」「商品価値を正しく伝えているか」を評価軸として設定し、
再発信するUGCを精選する必要がある。
選定段階で大切なのは、“宣伝色のない自然な投稿”を選ぶこと。
本音が感じられる投稿ほど、他の消費者の信頼を獲得しやすい。
■ ステップ③:公式アカウントで紹介・拡散する
—「発信者を主役にする」ことでUGCが育つ
優れたUGCを公式アカウントで紹介することは、UGCマーケティングの要となるステップである。
しかし、ここでのポイントは「企業が発信する」ではなく、“投稿者を称賛する”視点で発信することだ。
-
紹介するときは「企業目線」ではなく「感謝の言葉」から始める
例:「素敵な投稿をありがとうございます」「こんな使い方もあるんですね!」など。 -
投稿者の名前やアカウントをきちんとクレジット表記する
これにより、「自分の投稿が公式に認められた」というポジティブな体験が生まれ、他のユーザーの参加意欲も高まる。 -
UGC専用の公式ハイライト・ページを作成する
Instagramではハイライト機能、ECサイトでは「みんなの声」ページなどを設けることで、UGCが“ブランドの一部”として定着する。
UGCを紹介することで得られるのは「露出」だけではない。
「ブランドが顧客を尊重している」ことを可視化できる点こそが、最大の価値である。
■ ステップ④:投稿者との関係づくりと著作権の注意
—「UGCは信頼の上に成り立つ」ことを忘れない
UGCを活用する際には、法的・倫理的な配慮が欠かせない。
特にSNS時代は拡散が速く、ひとつの誤対応がブランド信頼を損ねかねない。
以下の3点を徹底することが重要だ。
-
使用許可の確認を行う
投稿を再利用する場合は、必ず投稿者本人に許可を取る。
特に商用利用(広告や販促素材への転用)の場合は、明確な合意が必要である。 -
クレジット表記を明記する
「@ユーザー名」など、発信元を明示することで信頼性が高まる。
同時に、投稿者に対する感謝の姿勢を示すことにもつながる。 -
個人情報・肖像権・著作権への配慮
写真に第三者が写っている場合や、他社ブランドが映り込んでいる場合など、権利関係を事前に確認する。
UGC活用は“信頼”の上に成り立つ。
そのため、法的リスクを回避するルール整備と、透明性の高いコミュニケーションが欠かせない。
■ ステップ⑤:成果を分析し、次のUGCサイクルへつなげる
—「投稿で終わらせず、戦略に還元する」
UGC活用は投稿・紹介で終わりではない。
次に生かすためのデータ分析と改善が必要である。
-
UGC経由のアクセスや購買率を可視化する
「どのUGCが最もエンゲージメントを得たか」「どの投稿が購買につながったか」を分析。
SNSのインサイト機能やUTMパラメータを活用することで、UGCの効果を測定できる。 -
UGCの傾向を分析してマーケティング全体に反映する
投稿内容から「顧客がどの価値を感じているか」「どんな言葉で表現しているか」を抽出。
これを新商品の開発・広告コピー・販促設計に活かす。 -
継続的なUGCループを設計する
「投稿 → 紹介 → 拡散 → 新しい投稿」というUGCの循環構造を意識することで、
UGCは一過性ではなく、ブランドの成長サイクルとして機能する。
■ UGCを仕組み化できる企業が強い
UGCを活用できる企業とできない企業の違いは、“偶然”か“仕組み”かにある。
UGCを単発の施策で終わらせず、戦略的に設計し、継続的に運用する体制を持つことで、
ブランドは顧客と共に成長していく。
UGCとは「声を集める戦略」ではなく、
“顧客と共にブランドをつくる仕組み”である。
6. 効果測定:UGCの成果を“数字で見える化”する

UGC(ユーザー生成コンテンツ)は“共感”や“信頼”といった感覚的な価値を生むが、
ビジネスとして成果を最大化するためには、その効果を定量的に測定する仕組みが不可欠である。
「投稿が増えた」「反応が良かった」だけではなく、
どのUGCがどのようにブランド成長に貢献したのかを可視化することで、次の戦略が明確になる。
■ 1. UGCの効果を測定する目的とは
UGCの効果測定の目的は、単に数字を出すことではない。
本質的には次の3つを明確にするためのものだ。
-
UGCがブランド認知や購買行動にどう影響したかを理解する
→ 「どんな投稿が顧客の心を動かしたのか」を明らかにする。 -
施策の中で最も効果的だった要素を特定する
→ どのSNS・フォーマット・ハッシュタグが最も成果を出したかを比較分析。 -
継続的なUGC運用の改善サイクルを構築する
→ 成果をデータで検証し、より効果的なUGC戦略に再設計する。
■ 2. UGCの効果を測定する主要指標(KPI)
UGCの成果を可視化するための代表的なKPI(重要業績評価指標)は以下の通り。
これらを目的別に整理すると、「認知・エンゲージメント・購買・拡散」の4フェーズで測定できる。
【① 認知フェーズ:どれだけ見られたか】
- リーチ数:投稿がどれだけのユーザーに届いたか。
- インプレッション数:投稿が表示された回数。
これにより、UGCがどの程度の人々に露出しているかを把握できる。
特に新規顧客層への浸透を狙う場合は重要な指標となる。
【② エンゲージメントフェーズ:どれだけ共感されたか】
- エンゲージメント率=(いいね+コメント+シェア)÷リーチ数 ×100
- コメント率:投稿に対する意見・感想の割合。
- 保存率:ユーザーが再閲覧のために保存した割合(信頼度の高いUGCの指標)。
エンゲージメント率が高いUGCは、共感度が高く“人の心を動かす投稿”と判断できる。
単なる閲覧ではなく「行動を伴う反応」がどれだけ起きたかを重視する。
【③ 購買フェーズ:どれだけ行動を促したか】
- コンバージョン率(CVR):UGC経由で購入・申込・来店に至った割合。
- クリック率(CTR):UGC内リンクやタグのクリック率。
- 購入単価・リピート率:UGCを閲覧したユーザーがどの程度ロイヤル化したか。
UGCの最終的な目的は「行動変容」である。
数値で“売上や成果に結びついたUGC”を特定することが、次の施策に直結する。
【④ 拡散フェーズ:どれだけ広がったか】
- 投稿数(UGC生成量):特定期間内にユーザーから発生したUGCの数。
- リポスト数・メンション数:UGCがどれだけ他者に共有されたか。
- UGCの増加率:キャンペーン前後での投稿増加の割合。
UGCが自然に増えている場合、顧客が“ブランドを自発的に広めたい”状態になっている。
この「UGCの自走化」が、ブランドの長期成長を示す重要な指標となる。
■ 3. 分析に役立つ主要ツールと活用法
UGCの成果を正確に追跡するには、分析ツールの活用が欠かせない。
● Google Analytics(GA4)
UGCから自社サイトやECサイトへの流入をトラッキングする。
- ソース別に「Instagram」「TikTok」「X」などを比較。
- UTMパラメータを設定し、「どの投稿経由で購入が発生したか」を可視化。
● SNS分析ツール(例:Sprinklr、Hootsuite、Social Insight)
- エンゲージメント率、投稿ごとの反応、拡散経路をリアルタイムで分析。
- ブランドハッシュタグの投稿数推移を自動計測し、UGC増加の傾向を可視化。
● UGC専用プラットフォーム(例:Yotpo、Bazaarvoice、UGCbase)
- 投稿収集・選定・効果測定を一元管理。
- ECサイト上でUGCの影響を直接データ化できる。
これらを組み合わせることで、UGCの影響を「見られた」から「売れた」まで一気通貫で分析できる。
■ 4. データを“次の戦略”に還元する方法
分析で終わらせず、データを「戦略の材料」として活用することが重要である。
-
成果の高いUGCを再利用する
反応の良かったUGCは、公式アカウントや広告素材として再編集して活用。
“顧客の声を企業の武器に変える”という発想を持つ。 -
投稿傾向から新たな顧客ニーズを発見する
UGC分析によって、消費者が“どんな視点で商品を評価しているか”が分かる。
たとえば、「デザインよりも使いやすさを重視している投稿が多い」場合、
製品開発や広告メッセージを見直すヒントになる。 -
KPIを定期的に更新し、改善サイクルを作る
UGC施策は一度の成功で終わらない。
定期的にKPIを見直し、「リーチ→共感→購買→再投稿」の流れを数値で管理することで、
UGCマーケティングを継続的に最適化できる。
■ 5. 定量評価だけでなく“定性分析”も重視する
数字で測れる成果だけでなく、投稿の質的分析(定性評価)も重要である。
- 投稿文に含まれるキーワード(例:「信頼」「安心」「コスパ」「感動」)を抽出し、顧客の心理傾向を把握。
- ポジティブ・ネガティブ投稿の割合を分析し、ブランドイメージの変化を評価。
- 顧客が商品をどの文脈で紹介しているかを分析することで、「ブランドがどう語られているか」を理解できる。
UGCは“顧客の声”そのものであり、それ自体が市場調査のデータベースになる。
■ 6. 成果測定のゴール:UGCを「投資判断できる資産」に変える
UGCの成果を数値化し続けることで、
「UGCを活用したマーケティングがどれだけROI(投資対効果)を上げたか」を算出できるようになる。
たとえば:
- 広告CTR:0.8% → UGC活用後:2.3%
- CVR:1.2% → UGC活用後:3.0%
- 広告費用対効果(ROAS):+180%改善
このように、データで成果を示すことで、UGC施策を単なるブランディング活動ではなく、
「収益に貢献するマーケティング投資」として位置づけることができる。
■ 数字で“共感”を証明するのがUGCマーケティングの進化形
UGCの本質は「共感」だが、共感も今や数字で可視化できる時代である。
データを通じて、「どの共感がブランドを動かしたか」を明らかにすることで、
UGCマーケティングは感覚的な取り組みから、戦略的なビジネスモデルへと進化していく。
UGCを“感情のデータベース”として活かせる企業こそ、
これからの信頼経済の中心に立つ存在となるだろう。
7. 今後の展望:UGCが創る“共創マーケティング”の未来

UGC(ユーザー生成コンテンツ)は、もはや“口コミ”の領域を超え、
企業と消費者が共にブランドを作り上げる時代の象徴となりつつある。
これまでのマーケティングが「企業が発信し、消費者が反応する」という一方向型だったのに対し、
UGCを軸とする時代は「企業と消費者が共に発信し、共に価値を生み出す」双方向型の構造へと進化している。
この流れは、AI・コミュニティ・データの融合によって、さらに加速していく。
■ 1. “共創マーケティング”の中心にUGCがある
これからのブランド価値は、企業が語るものではなく、顧客が語る物語によって形成されていく。
UGCはその土台となる「共創マーケティング」の最重要要素である。
共創マーケティングとは、顧客が単なる「購入者」ではなく、「共作者」としてブランドに関わる仕組みのこと。
この構造では、企業が“完璧なストーリー”を作る必要はない。
顧客が日常の中でブランドを使い、自らの体験を共有することが、ブランドの“物語”を育てていく。
たとえば、アウトドアブランド「Snow Peak」は、ユーザーのキャンプ写真や体験をUGCとして紹介し続けることで、
「商品」ではなく「ライフスタイル」を象徴するブランドに成長した。
企業が発信するよりも、顧客の体験そのものがブランドの広告になる時代が来ている。
■ 2. AIが変えるUGCの価値:UGC × AI解析の時代へ
UGCが膨大に増える中で、AIがその価値をさらに引き出す。
AI技術を用いたUGC解析によって、これまで見えなかった「顧客の本音」や「潜在ニーズ」が浮かび上がるようになっている。
たとえば、AIがSNS上のUGCを自動的に分類し、次のような分析が可能になる:
- 「どの投稿が最も共感を生んでいるか」
- 「どんなキーワードがブランド好感度に影響しているか」
- 「ポジティブ・ネガティブな感情傾向」
これにより、企業は“リアルな声”をデータとして蓄積し、マーケティング戦略や商品開発に反映できる。
さらに生成AIの登場によって、UGCの内容をもとに自動で広告コピーやプロモーション案を作成する動きも広がっている。
つまり、UGCは「顧客の声」であると同時に、「AIが学習する素材」としても重要な経営資産になる。
UGC × AIの組み合わせは、企業のマーケティングを“感覚”から“科学”へと進化させる。
■ 3. UGCはファンコミュニティの中心になる
UGCのもう一つの大きな価値は、ファンコミュニティを形成する力にある。
共通のブランド体験を共有するユーザー同士は、自然と「仲間意識」を持つ。
その中でUGCは、“共感の証拠”としてコミュニティの絆を強化していく。
たとえば、ユーザーが「#〇〇愛用中」「#〇〇仲間」といったハッシュタグで投稿し合うことで、
「このブランドが好き」という感情がネットワーク化される。
結果として、ブランドは単なる製品提供者ではなく、“共感の場を提供する存在”となる。
このようなファンコミュニティを持つブランドは、顧客が自発的に情報を拡散し、
ブランド防衛者(Brand Advocate)としての役割を果たすようになる。
UGCは、ファンを「消費者」から「支援者」へと進化させる装置なのだ。
■ 4. 企業の役割は“語る”から“聴く”へ
UGC時代における企業の最大の変化は、「発信者」から「傾聴者」への転換である。
かつては“ブランドがメッセージを伝える”ことが重要だったが、
今は“顧客の声をどう拾い、どう共感するか”が問われている。
UGCを活用するブランドは、顧客の声を単なる情報ではなく、“対話の起点”として捉える。
たとえば:
- UGCをもとに公式が感謝コメントを返す
- ユーザーの声を商品改善や新企画に反映する
- 顧客と共に次のキャンペーンを設計する
このような「顧客の声を中心にブランドを運営する文化」*が、今後のマーケティングの主流になる。
■ 5. Web3・分散型時代におけるUGCの新しい価値
将来的には、Web3(分散型インターネット)やブロックチェーンの技術がUGCの形を変える可能性もある。
ユーザーが生成したコンテンツの所有権や報酬が明確になり、
UGCが「資産」として評価される世界が見え始めている。
たとえば:
- 投稿がNFTとして保有・取引できるUGCマーケットプレイス
- 投稿データの提供によってユーザーが報酬を得る仕組み
- ファンがブランドの一部を“共に所有する”共同体型マーケティング
このような新たな潮流は、UGCを「企業が使うもの」から「ユーザーが共に育てる資産」へと変えていく。
■ 6. “共感”が企業価値を決める時代へ
これからのブランド価値は、知名度や広告費ではなく、“どれだけ共感を集めているか”で測られるようになる。
UGCが多いブランド=共感が多いブランド。
それはつまり、“顧客の声に支えられたブランド”である。
このようなブランドは、景気やトレンドの変化に左右されず、
長期的な信頼関係(Brand Relationship)を築くことができる。
UGCを軸にした共創マーケティングは、短期的な売上を超えて、
「共感を資本とする新しいブランド経済」を生み出していくだろう。
■ UGCは「ブランドを超える社会的価値」へ
UGCの未来は、“消費者が企業を支える時代”の象徴である。
企業はもはや発信者ではなく、「共感のプラットフォーム」を提供する存在になる。
AIやデータ分析によってUGCの価値は数値化され、
Web3やコミュニティ文化によってUGCは「資産化」していく。
つまり、UGCは単なるマーケティング手法ではなく、
“ブランドと人と社会をつなぐ新しい経済圏”の中心的存在となる。
8. まとめ:UGCは「企業の広告」ではなく「顧客の証言」

UGC(ユーザー生成コンテンツ)は、もはや一時的なトレンドではない。
それは、企業が「何を語るか」ではなく、顧客が「どう語るか」でブランドの価値が決まる時代の象徴である。
従来の広告は、企業が発信者として自らの価値を伝えてきた。
しかし今の時代、消費者はそのメッセージを鵜呑みにしない。
むしろ、同じ立場の他の消費者が発する「リアルな声」にこそ、強い信頼と共感を抱くようになっている。
■ 1. UGCは「信頼」を可視化する新しいメディア
UGCとは、単なる投稿や口コミの集合ではない。
それは、ブランドと顧客の信頼関係を“見える形”で表すメディアである。
顧客が自ら商品やサービスを語り、体験を共有するという行為は、
「このブランドを信頼している」「この体験を他の人にも伝えたい」という意志の表れであり、
その一つひとつがブランドの“証拠”として蓄積されていく。
つまりUGCは、企業が発信する広告ではなく、顧客自身が語るブランドの証言集だ。
それは、いわば“顧客によるブランドの第三者認定”であり、企業の発信よりも説得力を持つ。
■ 2. “売り込むマーケティング”から“共感を育てるマーケティング”へ
UGCが価値を持つ背景には、現代のマーケティング構造の変化がある。
かつてのマーケティングは「注意を引き、購買を促す」ことが中心だった。
しかし、今の時代においては、「信頼を築き、共感を育てる」ことがブランド成長の軸となっている。
顧客は、商品のスペックではなく「どんな人が使っているか」「その人の体験に共感できるか」で選ぶようになった。
つまり、購買の原動力は「情報」から「感情」へとシフトしている。
UGCはその感情を最も自然に喚起する仕組みであり、
“広告”のように説得するのではなく、“共感”によって人を動かす。
それは、押し売りではなく、顧客が自発的にブランドを語りたくなる「共感経済」の世界である。
■ 3. 企業は「発信者」ではなく「共感を生む環境設計者」へ
UGC時代の企業に求められる役割は、“広告主”ではなく“共感の仕掛け人”である。
企業がすべきことは、
「どうすれば顧客が自然に語りたくなるか」
「どんな体験がシェアしたくなるか」
という視点で、ブランドと顧客の関係を設計することだ。
そのためには、次の3つの姿勢が不可欠である。
-
顧客を「広告媒体」ではなく「共創パートナー」として尊重する
UGCの投稿者は“企業の代弁者”ではなく、“ブランドの共作者”である。 -
顧客の声をブランド戦略に取り入れる
UGCから見える顧客の感情や使い方を、商品開発や企画に反映することで、ブランドは進化する。 -
企業のメッセージを“顧客の物語”と共鳴させる
ブランドストーリーを押しつけるのではなく、顧客のリアルな体験と響き合うメッセージを発信する。
このように、UGCを通じて企業は「語る存在」から「共に語られる存在」へと進化する。
■ 4. UGCは“信頼資産”として企業価値を高める
これからの時代、UGCは単なるSNS施策ではなく、ブランドの「無形資産」として評価されるようになる。
UGCが多いブランドほど、顧客の信頼を得ており、
それは広告費では買えない“社会的信用力”を意味する。
- 投稿数が多いブランドは、ファンが多い証拠。
- 投稿内容がポジティブなブランドは、顧客満足度が高い証拠。
- 投稿が継続的に増えているブランドは、長期的に愛されている証拠。
これらの要素はすべて、ブランドの「信頼指数」として企業価値を高める要因となる。
UGCを積み上げることは、単なるマーケティング活動ではなく、“ブランドの信用を資産化する行為”なのだ。
■ 5. これからの強い企業は「顧客と共に歩む企業」
未来の市場で最も強いブランドは、「最も語られているブランド」ではなく、
「最も共感されているブランド」である。
UGCを活用できる企業とは、顧客を“広告の対象”ではなく、“共感の仲間”として扱う企業である。
そのような企業は、顧客の声を取り込みながら柔軟に進化し、
時代やプラットフォームが変わっても、常に「人の心」に残り続ける。
UGCとは、顧客が企業の代わりにブランドの物語を語ってくれる仕組み。
そしてその物語の積み重ねこそが、未来のブランド価値を形づくる最も強力な力になる。
■ 結論:UGCは“共感でつながる時代の信頼通貨”
UGCは、もはや「広告」ではない。
それは、顧客のリアルな言葉がブランドを育てる“信頼の通貨”である。
その通貨を大切に扱い、循環させる企業こそが、これからの時代に生き残る。
企業がUGCを軸に「顧客と共に語り合う文化」を築くことができれば、
そのブランドは“顧客に愛される存在”から“顧客と共に歩む存在”へと進化していくだろう。
UGCとは「企業が語る広告」ではなく、「顧客が紡ぐ物語」。
そして、その物語が多くの共感を呼び、信頼を積み重ねた先にこそ、
真に強いブランドの未来がある。

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